軍艦海戦の歴史を知りたい人へ元潜水艦乗りが描き尽くす『赤城と比叡』

みなさんこんにちは。

漫画大好き辰巳です。

今回はマニア魂全開の、

『赤城と比叡』です。

元サブマリナー=潜水艦

乗りの作者が、近代海戦に

愛をこめ、描いて描いて

描きつくした漫画です。

正直、好き嫌いの分かれ

作品です。

物語の主人公は軍艦です。

作者自ら「残念でした! 

この漫画には軍艦しか出ません!」

明記しています。軍艦乗りの

軍人は出てきますが、女性は

皆無です。

そして描画がものすごく濃い!です。

すべてがどこまでも細かく、

執着としか言えないほどに

どこまでもフリーハンド

描きこまれ、その描線が紙面を

埋め尽くしています。

セリフまで全部手描きです。

その細かすぎる描線を「愛」

理解できる方のみ、この漫画を

読んでみてください。

濃密な軍艦愛にたまげる

思います。

8編の短編が収録されていますが、

登場人物紹介ではなく、

登場軍艦紹介が巻末図録にある

ところからもう、徹底的に

「主役は軍艦」の物語です。

そしてカバーを外すと国際信号旗

一覧がカラーで掲載されている

という、どこまでも軍艦尽くしの

1冊です。

あらすじ――この本に登場する軍艦たち

第2話、表題作の『赤城と比叡』は、

明治27(1894)年の

黄海海戦の物語です。

艦隊の中でいちばん小さな

軍艦・赤城と、赤城よりは

少し大きい比叡、この2艦の

戦いの様子が描かれます。

艦は石炭を焚いて煙突から

煙をモクモクと吐き、

マスト上の見張りが目視で

戦況を見定める、古い時代の

海戦です。

比叡は足が遅く、敵の戦艦に

囲まれますが、逆にその

ど真ん中に入りこんで、

敵の艦砲射撃の死角に

飛びこむ奇策に出ます。

比叡が脱出すると今度は

赤城が囲まれます。

砲弾を浴びて艦体が激しく

破損する中、なんと艦長が戦死、

航海長が指揮を引き継ぎますが、

艦内はすでに大混乱、

マストは折れ、機関の蒸気管は破れ、

満身創痍ですが、味方の巡洋艦が

引き返してきたことで状況は好転、

翌日まで戦線で奮闘するのでした。

艦橋には艦長の血が飛び散った

海図が残されていました。

辰巳の感想――臨場感は細部に宿る

いやはや細かい。

軍艦が、戦闘の様子が、

軍人たちの意気が、

こんなにも細かく描写されて

いる漫画は初めて見ました。

まるで同時代を生きて

その艦を見てきたかのような、

模写を越える細密画が、

歴史的資料の域に達して

いる漫画です。

見えるものはすべて描く!

それは大砲や艦橋など、

写真の資料で確認できそうな

ところのみならず、舷側の鋲の

一つ一つ、破壊された箇所や、

折れたマスト、果ては艦の

蹴立てる波のうねりまで、

すべてが写真のように、

手描きで書きこまれています。

私は海戦の歴史にはくわしく

ないのですが、この絵は

時代考証も完璧なのではないかと

思うにつけ、作者の創る徹底的な

臨場感にあっぷあっぷと溺れ

そうになります。

分厚い本ではないのですが、

その密度が本を3倍にも4倍にも

重く感じさせるのです。

しかし臨場感は重い一方、

登場する軍人の運命は非常に軽く、

艦長が一撃であっさり戦死して

しまったり、艦があっけなく沈没

して一人の生存者もなかったり

といったことはさらりと描かれて

います。

それもまた戦争のリアルなのかも

しれませんが、この物語の中では

人は脇役なのです。

なので人間の主人公は不在、

登場人物に感情移入する暇は

ありません

戦争の物語を描くと、どうしても

群像劇や英雄譚に走りがちだと

思うのですが、それがいっさい

ない、という意味では非常に

ドライな物語です。それでも読者を

ぐいぐいと引きこんで、

最後までハラハラドキドキ読ませる

この作者、すごいと思いました。

興味のない人には徹底的に

向かない漫画ですが、

大勢の読者を得ようなどとは

はなから思っていない作者の、

ひたすらに緻密な描線は、

ある意味潔いというか、

あっぱれだと思います。

こういう漫画の描き方も

あるんだと、なんか驚かされた作品です。

作者・黒井緑とは・・・

今どきの作家でウィキペディアにも

ピクシブにもひっかかるものがない、

完璧に謎の人です。

分かっていることは、

帯に書かれた

「元サブマリナー」という

驚きの経歴だけです。

潜水艦乗り、ということは

男性だよね、とか、元、という

ことはそれなりに年齢の行った

人なのかな、程度にしか見えて

こないですが、同人誌即売会には

足しげく出ているようなので、

行けば案外簡単に本人に会える

かもしれません。

白泉社のWebコミックス

「楽園」のWeb増刊で

『軍艦無駄話』を連載

著作は本作の他に

『ユトラント沖海戦』

『朝雲は振り向かない』

そして新刊の

軍艦無駄話

の計4冊です。

いずれも近代海戦もので、

描きこみが尋常でないうえに、

アシスタントもアシストしよう

のない画風を考えると、

そうそう量産できる作風では

ないと思いますが、最新作巻末で

「次回も」とあるので、

たぶんまたがんばって描いて

くれると思います。

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『赤城と比叡』

黒井緑(くろい・みどり)著

楽園コミックス 白泉社 2015年発行

『ユトラント沖海戦』

黒井緑(くろい・みどり)著

楽園コミックス 白泉社 2016年発行

『朝雲は振り向かない』

黒井緑(くろい・みどり)著

楽園コミックス 白泉社 2018年発行

2019年夏に待望の新刊

『軍艦無駄話』

刊行されました。

例によって軍艦愛溢れる

「無駄話」です。

帯に

「艦橋はなぜ艦『橋』なのか?」

と書かれてますが、そういう

うんちくがぎゅうぎゅうに

詰め込まれています。

これ1冊読めば、軍艦の歴史は

ほぼ掴める、と思います。

『軍艦無駄話』

黒井緑(くろい・みどり)著

楽園コミックス 白泉社 2019年発行

*******

以上、『赤城と比叡』、作者黒井緑の紹介でした。ではでは~

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