川上和人の爆笑鳥類学と過酷な調査マジメな理由『又吉直樹のヘウレーカ!』

(出典 : https://kangaeruhito.jp/interview/6028)

今回は、笑える学術書、ベストセラーの書ける鳥類学者・川上和人さんをクローズアップしたいと思います。

鳥類学者なのに著書の題名が『鳥類学者だからって、鳥が好きだと思うなよ。』。

そうなの?と思わず表紙からびっくりしてしまいます。

じゃあ鳥についてはどう思ってるの?

しかも動物が苦手って、それでフィールドワークに出て大丈夫なの?

冗談のように過酷な、命がけの調査を経た結果が『鳥類学者 無謀にも恐竜を語る』って、それどういうこと?

なんだか謎だらけの不思議学者さんを知りたいと思い、調べてみました。

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プロフィール

川上和人(かわかみ・かずと)さんは1973年大阪生まれ。

素っとぼけたジブンツッコミとボケに満ち溢れた著書は、どうも大阪生まれの血のなせる業ではないかと想像します。

小学生の時に宮崎駿の『風の谷のナウシカ』を観て、環境に関心を持ったといいますから、根はアカデミックな要素があったのでしょう。

大学では林科学を専攻し、森林動物をテーマに研究していたそうです。

その研究の中で、生物の相互作用に惹かれ、やがて鳥類にたどりついたらしいのですが、鳥と相互作用、イマイチピンときませんね。

そして野生動物を調査するサークルに入ったことで、ここに至って、好きではないけど「スゴイ」と思う鳥類の世界に足を踏み入れたようです。

しかし、川上さん、書籍でも「鳥が特別に好きなわけじゃない」と公言してしまってます。

さらには、動物が苦手で、犬も昆虫もキライ

それで生物学ってどうなんでしょうか。

卒業後は、森林総合研究所に入り、のちに主任研究員となり、鳥類学者として本格的な研究に打ち込みます。

特に小笠原諸島の無人島に生息する鳥類の研究を行ない、20年近いキャリアを築いてきました。

そして2017年には、『鳥類学者だからって、鳥が好きだと思うなよ。』というブッ飛んだタイトルの本が学術書としては異例のベストセラーとなり、一気に有名になりました。

現在も、1年の3分の1は小笠原諸島でフィールドワークに臨むそうですので、その点は本当の?学者さんのようです。

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過酷なフィールドワーク

しかし、著作の中では、鳥類の研究、というよりジャングルの探検隊ともいうべき、まさに命がけのフィールドワークが書かれています。

東京都の小笠原、といっても無人島の調査ですから、ほぼ前人未踏の地。

港はなく、断崖絶壁を這いのぼって上陸し、ジャングルに分け入れば、虫の大群に襲われる。

鳥類だけどおそろしい吸血カラスと遭遇してしまって研究どころではなくなったり。。。

学者の研究というより、冒険家の命がけの踏査行です。

なんでそこまでして、と思ってしまいますが、無人島には、人間の手の入らない自然本来の生態系が存在するから。

また、小笠原にはそこにしかいない希少種がいるから。

何より無人島の調査は、手掛ける人が少なく、研究が進んでないため、学者として好奇心が勝ったから、といいます。

新しいものの発見には、「世界中でこれを知っているのは自分だけ」という高揚感があるのだそうです。

鳥は「好き」ではないけど、「スゴイ」と思う。

それが川上さんの熱意の源なのです。

ボケツッコミの爆笑著書とその理由

フィールドワークと研究の日々を経れば、あとはその成果を出版して・・・

という感じで?川上さんも著書を発行されました。

2017年に上梓した『鳥類学者だからって、鳥が好きだと思うなよ。』です。

え? 鳥、好きじゃないの? どういうこと?

題名からしてもうおかしいですが、笑える教養本として、ベストセラーを記録しました。

「鳥類学者に必要なのは、一に体力、二に体力、三、四がなくて、五に体力」という、決死の調査の行く先は、火山や無人島のジャングル。

理系だからと言って研究室にこもっていられない鳥類学者のたいへんさ、というか命がけの日々がつづられています。

また、これも大阪人の血筋のせいか、随所に登場するボケとツッコミとジョークは、サイエンス本であることを自ら忘れてしまったかのような、爆笑エッセイのようなノリがさく裂します。

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まず、目次からして笑かしてくれます。

第二章 鳥類学者、絶海の孤島で死にそうになる
南硫黄島・熱血準備編/ 南硫黄島・死闘登頂編

第五章 鳥類学者、何をか恐れん
熱帯雨林の歩き方/ エイリアン・シンドローム/ となりは何をする人ぞ/ 恐怖! 闇色の吸血生物

第六章 鳥類学者にだって、語りたくない夜もある

なんだか特撮映画のようなノリです。

さらに、

アカガシラカラスバトという鳥の頭がなぜ赤いのか。「赤といえば、赤い彗星シャア・アズナブルの専売特許」

って、なぜそこでガンダム?

とどめには「森永チョコボール」のキャラクター・キョロちゃんを真剣に研究する、「エア鳥類学」なるものを立ち上げ、キョロちゃんの生態について大真面目に語ったり。

それでも本人は、「鳥を見ると、ついまじめに考えてしまう」のだといいます。まじめ、ですか。なんだかよくわかりません。

2018年には、『鳥類学者 無謀にも恐竜を語る』を出版。

アマゾンの紹介文には

「つまり、鳥類学者は恐竜学者なのである」
「い、言いきって大丈夫ですか? センセイ」

と、またしても笑いの予感。

とはいえ、実際には、本職の古生物学者の方からクレームが怖かったとか。

が、出版してみると、批判はゼロ。というか反応ゼロ。

それはちょっと悲しかったようです。確かに寂しいですね。

本文では、始祖鳥の考察の中で、

「あの格好で飛べなかったら詐欺だ。科学的論拠はさておき、私は始祖鳥は飛べたと直感的に信じている」

「うん、我ながらじつに科学的でない」

詐欺まで言いますか。しかも科学的でなくていいんですかと、古生物学者が無視しても、読者はあっけにとられてしまいます。

結論は、

恐竜が鳥に進化したことを知ることで、鳥に興味を持ってくれる人がもっと増えてくれるといいな

ということで、あくまでも鳥類愛?の人なのでした。

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そして、2019年の最新刊は、『鳥肉以上,鳥学未満.』

なんと、普段食べるトリ肉を考察しています。

テーマは「鶏肉はなぜおいしいのか」。

ニワトリの胸肉はなぜヘルシーなのか、という問いには、「持続的に飛行するようにはできてないから」と、非常にまじめなお答えが開陳されています。

本来、長時間の飛行に耐えるには、胸肉=筋肉は赤身でなければならないのだそうです。実際、カモ肉は真っ赤ですね。

しかし、鶏の筋肉は、ボリュームはあっても色は薄いピンク。ここに鶏という鳥が飛ばない、あるいは飛んでも長距離ではない理由があるといいます。

そんなこと、食べてる時にはまったく考えませんが、言われてみると納得ですね。

マジメな理由

鳥のように自由に空を飛びたい――

鳥を愛する人間の心にはロマンがありますが、川上さんに言わせれば、「ぶっちゃけ、お金にならない」と一刀両断です。

同じ生物学でも、農作物に被害を出す特定の虫の研究なら、スボンサーはいくらでもつくのに、鳥の研究はそもそも就職口がないと、嘆いています。

だからこそ、面白い本を書けば、興味を持つ人が増えて、学生が増え、大学に研究室ができてポストも増えるだろう。

そういう意味で鳥類の研究は、まずすそ野を広げる段階であり、それゆえ一般向けの書籍を書いているのだと、川上さんは理由を語っています。

文章は面白おかしくとも、鳥類研究の世界にはひじょうに真摯に向き合っているのですね。

そして、国の予算で小笠原諸島の調査をしている自分を「税金で研究させてもらってる」といい、だからこそ、一般の人にも研究の成果を分かち合わねばならないと思っているそうです。

そのための面白エッセイと思うと、笑いの影にあくまでも真面目な理由があったことが分かり、ベストセラーになって良かったですねとねぎらいたくなります。

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まとめ

大学の研究というと、時折「実学」という言葉が出てきます。

「実社会で役に立つ学問」という意味で語られるそれは、工学などの理系はヨシ、文学などの文系はムダ、というヘンな優劣をつけて言われます。

第二次世界大戦時には、文学部の学生はいらないといわれ、最近でも政治家が平然と、将来の就職に役立つスキルを大学で身に着けてほしいなどと言います。

しかし、大学は企業のためのスキル講座でもありません。

にも拘わらず、川上さんも言うように「お金になるかならないか」という、実に世知辛い二分法がまかり通りがちです。

しかし、役に立つかどうかは、あくまでその時点での評価であり、将来どうなるかまではわかりません。

何より、学問の世界から多様性を奪うことになります。

生物の世界が大きな多様性をもっていることがわかっている今、人間の学びの世界にも多様性という意味において無駄なものはないと言えます。

「鳥が好きだと思うなよ」と言いつつ、「鳥ってスゴイと思うことはある」と返す川上さんの言葉には、「驚き」という名の好奇心があることが分かります。

その好奇心こそが人間社会に多様性をもたらすはずです。

以上、川上和人さんの紹介でした。ではでは~

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