宇宙創生 生命とは 人類とは すべての「答え」を知りたい人へ 『那由他』

MF文庫版

フラワーコミックス版

こんにちは。漫画大好き辰巳です。

今回は、その名のとおりものすごくスケールの大きな物語、宇宙創生から人類の未来までを描く壮大なSFを読みたい人へ、少女漫画SFの傑作『那由他』を紹介します。

「那由他(なゆた)」とは数字の単位で10の60乗(あるいは72乗)という、もはや哲学的な大数量のことです。億、兆、京(けい)、垓(がい)・・・ずっと行って最大の単位「無量大数(むりょうたいすう)」の2つ手前の単位、それが「那由他」です。

物語は、そんな気の遠くなるような数字を名に持つ、しかしごくごく普通の女子高校生の那由他が主人公です。

あらすじ――人類と宇宙の答えを求めて

ある日、那由他は、道端に倒れている「難民」の親子を見つけます。母親は重傷ののち死亡しますが、キロと名乗った少年は、「輪(ジャルン)」によって力を増幅した超能力者でした。キロは宇宙人・アザドーとともに地球を監視すると言い、那由他の記憶を消して別れます。

キロに輪を捨てるよう言われていた那由他ですが、こっそり隠し持っていたそれを頭にかぶることで記憶を取り戻します。

輪は数千年の過去から人類が持ち続けていたもので、現代でも「テリトリー」と呼ばれる、超能力者ばかりのグルーブが存在していました。しかし彼らはその超能力のためにアザドーに命を狙われており、那由他がテリトリーに加わってからも次々と襲撃されます。

なぜ、超能力者たちがアザドーに殺されるのか、なぜキロがそのアザドーに協力するのか、キロ=アザドーと人間の決戦の中、宇宙船がテレポートし、冥王星へと飛んでしまいます。そこには人類とアザドー、輪の秘密すべてを知る「遺跡」が存在していました。

人類は太陽系ごと封印されていた、しかも封印の外の宇宙は、次なるビッグ・バンの中にあって終焉していた――人類と宇宙の真実すべてを知ることを、那由他は選びます。

辰巳の感想――高校時代に読んであたまパーン!

文庫版で2巻という、短めのボリュームの中に、ここまで巨大なストーリーが展開、完結しているのはもはや奇跡!です。

少女漫画イコールお決まりの恋愛ものばかりと思っていた私が高校時代に読んで、その大きすぎるスケールにひれ伏した物語です。名前も大きいですが、物語も稀有壮大で、10代の私にはついていけなかったほどの、膨大な時空間と思考が展開されています

少女漫画というくくりにあるせいか、今一つ注目のされない、埋もれた作品ではありますが、この作品の発表当時に今のようなマンガ賞が各種あったら、おそらく総なめするんじゃないかという、一言でいえば傑作です。

初読から数十年たちますが、これほど巨大なスケールの物語は、それこそ手塚治虫の『火の鳥』か、あるいはブッ飛んで般若心経クラスしかないんじゃないか?というくらいに、それはもうたいへんな展開をしています。ちょっとステキな男の子が出てきたり、昔の少女漫画らしい描き方もあるのですが、終盤はそれらをかなぐり捨てて、全宇宙を俯瞰する哲学として昇華しており、この作者、天才としか思えません。むしろ、現代でなく、80年代だったからこそ存在しえたSFではないかと思います。遠い未来と思っていた21世紀に入った今、逆にこうした超巨大思考のSFが見られなくなったように感じるのは残念な限りです。人類の思考は閉じられてしまったのでしょうか。

少女漫画に抵抗のある人、今さら宇宙人とか超能力者とかどうよと思う人、そういう思いこみをちょっとどかして、この作品を読んでみてください。あたまパーン!!ってなります。

作品情報

1982~83年にフラワーコミックスで全3巻、2001年にMF(メディアファクトリー)文庫で全2巻が刊行されています。

また、幻冬舎コミックス漫画文庫刊行の『リュオン』に70ページ超の外伝『ターン』が収録されています。

1986年にOVAアニメ化されましたが、残念ながら未見です。どうもだいぶはしょったストーリー展開らしいので、見たらガックリ来るかもしれません。

作者・佐々木淳子とは・・・

1977年のデビュー作『キムのゆうれい』から、『ブレーメン5』、『那由他』、『ダークグリーン』、短編集の『SHORT TWIST ショート・ツイスト』、など、一貫してSFを発表している方です。

文庫版のあとがきによると、漫画の発表は長らくしていないようです。こういう作品を作れる才能のある人こそ、21世紀の今に壮大なストーリー作品が待たれる作家だと思うのですが、残念至極です。

文庫化にあたって、表紙とカラー口絵、あとがきを描き下ろしてますが、20年前と比べて絵がかなりかわいくなっててびっくり。それでもある意味、今風の絵になっているので、今こそこの絵柄で映画化!・・・とかしないでしょうか、と思っております。

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『那由他』

佐々木淳子(ささき・じゅんこ)著

フラワーコミックス 全3巻

1981年発行 小学館

MF文庫 全2巻

2001年発行 メディアファクトリー

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以上、『那由他』の紹介でした。ではでは~

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