(出典 : https://www.shosetsu-maru.com/hontowatashi/5-1)
今回は、『ざんねんないきもの事典』
シリーズが大ヒットした動物学者の
今泉忠明(いまいずみ・ただあき)さんを
クローズアップしたいと思います。
動物の本というとだいたい
「この動物はこんなところがスゴイ」
という書き方になるところを、
「こんなところがざんねん」という
新しい切り口で書いた今泉忠明さん。
確かにその発想はなかったと、
子どもだけでなく大人にも大いに
売れました。
しかも今泉忠明さんの一家はみんな
動物学者という驚きのご家庭で、
そのエリート教育?にはすごいものが
ありました。
今泉忠明さんとそのご家族を、
見てみたいと思います。
ネコ心理学者・高木佐保さんの
記事はこちら↓
プロフィール
今泉忠明さんは1944年生まれ。
お父さんの今泉吉典さんが動物学者
だったことで、家には標本として
持ち帰られたコウモリやヘビなど
何かしらの動物がいつもいる環境に
育ちました。
小学生時代には、お父さんに
連れられて山へ入り、わなを仕掛けて
ネズミを捕まえ、さらに剥製にする
技術まで教わったそうです。
父直伝でフィールドワークを
叩きこまれたんですね。
読む本も、お父さんが監修した
動物図鑑や動物関連の物語が
家にたくさんあったので、
それらを読んでいたそうですから、
まさに動物づけです。
大きくなってからも、父に誘われて
動物の生態調査に行き、動物に
ますますのめりこむ青春時代
だったとか。
そんな動物三昧のまま、大学へ進学、
動物学を学んで卒業。
1967年に国立科学博物館特別研究生と
なり、哺乳類の調査や、分類学・生態学を
学びました。
文部省の調査や、環境庁の生態調査など
にも参加。イリオモテヤマネコの生態な
どを調べます。
ある時は、北海道に世界最小の
トガリネズミというのがいて、
生きたまま捕獲した人がいないという
話を聞き、挑戦心を燃やして現地入り。
1999年になんと本当に生きたままの
捕獲に成功したといいますから、
すごい行動力です。
上野動物園では動物解説委員を
務めました。
現在は、伊豆高原の「ねこの博物館」の
館長となっています。
70歳を超えても、月に2回はフィールド
ワークに出掛けるそうです。
動物を知ることが人間自身を知る
ことになる、というのがモットー。
ちなみにいちばん好きな生き物は、
「孤高なチーター」。
苦手な生き物は毛虫だそうです。
「ざんねんないきもの事典」シリーズが大ヒット
2016年。動物たちのすごいところ
ではなく、残念なところを紹介して、
動物たちのヘンな魅力を伝えた
『おもしろい! 進化のふしぎ
ざんねんないきもの事典』は、
児童書としては異例の大ヒットを
飛ばし、今泉忠明さんは一気に
有名になりました。
一応、小学生の男子をターゲットと
した事典として出版されましたが、
結果は大人にも読まれて大人気作に。
2017年には『続ざんねんないきもの事典』、
2018年には『続々ざんねんないきもの
事典』が続けて出版されました。
毎年1冊ずつ、順調に発行されて、
シリーズの売り上げは累計で
290万部を突破。
そして2019年6月には第3弾の
『もっとざんねんないきもの事典』が
発売されます。300万部突破は確実
でしょうから、印税も億単位かと
思われます。まさに前代未聞、
空前のヒットです。
2017年には、サンシャイン水族館で
『ざんねんないきもの展』が開催され、
大盛況に。
2018年には、NHKのEテレでショート
アニメ化もされました。
アニメは、2019年の夏休みにも
新シリーズの放映が決定しています。
「ざんねん」シリーズは今年も
大人気確実ですね。
さらに、ざんねんシリーズに続いて、
『わけあって絶滅しました。
世界一おもしろい絶滅したいきもの
図鑑』も、今までにないコンセプトで
ヒットを飛ばしています。
もう題名からして面白い!私も書店で
表紙を見て思わず手に取ってしまい
ましたが、今泉さんの視点はなんで
こんなに面白いのか、一般的な学者の
イメージを変えるキャラクター性を
感じます。
家族もすごかった
そして今回調べて仰天したのが、
今泉忠明さんのご家族です。
お父さんは動物学者の今泉吉典さん。
主に小型哺乳類の研究をなさって
いた方で、1965年に発見された
イリオモテヤマネコの研究でも
有名だそうです。
さらに、お兄さんも動物学者の
今泉吉晴さん。
専門は動物生態学で、お父さん同様、
小動物の研究をしているそうです。
すごいことに、山梨県都留市の森に
小屋を建てて、東京から引っ越す
ほどの行動派です。
動物を捉えて研究室に持ち込む
のではなく、自分が研究室ごと、
動物の間に入ってしまったのです。
1975年には、お父さんと共著で
『ネコの世界』(写真左)という本を
出版していますが、これも普通の
事典とは大きく異なり、巻頭カラーの
ページには詩が掲載されています。
ネコはネコである
バラの咲いている午後の庭
ネコはネコらしく
円い
ちいさなからだをのばしたり
ちぢめたりしながら
ゆっくりと
うごく (略)
お堅い本なのに、抒情的な詩を
書いてしまうあたり、他の学者さんとは
ちょっと違いますね。
そのあたりの感覚が、今泉忠明さんの
「ざんねん」シリーズに通じるのかも
しれません。
1977年発行の『ネコの探求』(写真中)
という本とともに、ネコ愛に満ちた本と
なっています。
今泉忠明さんも、2015年に
『猫はふしぎ』(写真右)という本を
出して、「猫に愛される人」になる
方法を伝授しています。
「ねこの博物館」の館長でもあるので、
どうやら親子そろって大のネコ好きの
ようです。
さらにさらに、息子の今泉勇人さんも
動物学者になっており、2004年に父の
今泉忠明さんと共著で『カラス狂騒曲
行動と生態の不思議』 を出版しています。
今泉忠明さんが2018年に
『気がつけば動物学者三代』という
本を出版しているとおり、学者が三代
続いて、しかも3人とも動物学者と
いうのはかなり珍しいのではないかと
思います。
まとめ
研究者でありながら、今までに
ないユニークな視点でヒット
シリーズを飛ばす今泉忠明さんは、
動物愛がこじれておかしなことに
なってしまったのでしょうか。
ともあれ、本も順調に出版され、
ネタ切れの心配もなさそうです。
これからもますます面白い、
動物のトリビアを紹介してくれる
でしょう。
動物の世界は、親子三代かけても
果ての見えない不思議に満ちている
のですね。
以上、今泉忠明さんの紹介でした。
ではでは~