三田紀房は絵を描かない漫画家になる?『世界一受けたい授業』

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今回は、漫画家・三田紀房さんをクローズアップしたいと思います。

『ドラゴン桜』『インベスターZ』などの有名作品をとおして、三田さんが進めてきた計画は、アシスタントも含めての週休3日制のスケジュールと、さらには「絵を描かない漫画家」としてのシステムづくりだといいます。そのへんを調べてみました。

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プロフィール

三田紀房(みた・のりふさ)さんは1958年生まれ。

明治大学経済学部を卒業し、西武百貨店に就職されました。

しかし、実家の洋品店を営む父親から、帰ってきて跡を継いでほしいと言われ、2年間のサラリーマン生活を終え、帰郷します。

衣料品店を含め、商店街は時代に追われ、さびれていた上に、借金もあった状態で、三田さんの努力もむなしく事態は厳しいものでした。

そんな折、漫画の新人賞に目が行きます。好きなことを描いて賞金がもらえるなら楽でいいと、気軽に応募したそうですが、数回のチャレンジで見事に受賞、賞金50万円を手にしました。

紙とペンのみで、原価もほとんどかからない。腕一本でできる仕事で大金が手に入る。そう思った三田さんは本格的に漫画家への道を進みます。

そして、三田さんの出世作となり、社会現象まで引き起こした『ドラゴン桜』が生まれ、続けて『クロカン』『砂の栄冠』『エンゼルバンク』『インベスターZ』と、次々とヒットが生まれました。『ドラゴン桜』と『インベスターZ』は、ドラマ化もされています。

現在は、『ドラゴン桜2』と、『アルキメデスの大戦』を連載中です。

週休3日、残業なしという仕事

漫画家の仕事というと、アシスタントさんたちと部屋にこもって徹夜して、〆切ギリギリまで戦ったあとはバタンキュー、という、ちょっと悲壮なイメージがありますが、三田さんは漫画界のそういうあり方に疑問を抱いたそうです。

もっと効率よく仕事をできないか。徹夜でなく、朝型の生活でも仕事はできるのではないか。もっと休みを増やせないか。

『ドラゴン桜』で、徹底的に理詰めの展開をしてきた三田さんが、その理詰めの思考法を自身の働き方に向けたのです。

そうして三田さんはそれらの「常識」を壊し、まったく新しい仕事のしかたを確立しました。

それは、広い職場で週40時間労働、作業時間は朝9時半から夜18時半までで、残業は禁止、しかも週休3日という「働き方改革」でした。

三田さんはスタッフに、「大変だけど高給の仕事と、給料は少し下がるけど休みの多い仕事と、どちらがいいか」と提案、すると全員が「休みの多い仕事」を選択し、方針が決定されましたといいます。三田さんは人を使う経営者として、経費の削減までしてしまったのです。

そうして、自分もスタッフも気持ちよく仕事をする、気持ちが良ければモチベーションが上がる、能率もクオリティも上がる、と、いいことづくめの環境ができたと言います。

自分や周囲が常識、当然と思っていることに疑問を抱き、それらを打ち壊してまったく新しい、効率のいい働き方を作った三田さん。その考え方は、『ドラゴン桜』などで主人公たちが見せた「常識を打ち壊す」あり方そのままだったのです。

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「外注」という新しい作り方

三田さんはさらに新しい方法として、作画の「完全外注」という方法を編み出しました。

従来の一般的な漫画制作では、背景などをアシスタントが描き、漫画家が人物などを描くという分業制をとっていますが、三田さんはその「人物を描く」部分までも丸ごと外部に委託する方法を作り出したのです。

もともと、背景の作画を外部のデザイン会社に任せていたそうですが、そこから発展させて、人物の作画まで丸ごと外注するという形を、ビジネスとして成立させることができるのではないか、と考えたといいます。

そこで、自分の絵の描き方を外注のスタッフに教え、作画させる方法を、半年以上かけて十分なレベルまで引き上げたそうです。

これによって、三田さん自身が絵を描く必要性がなくなりました。

三田さん自身は、物語のシナリオを考え、構成を作るところで作業終了、あとは外注スタッフに任せる。この方法でより長い時間を、物語のシナリオ作りやへ取材にかけられるようになり、効率が良くなったといいます。

この分業制を確立すれば、アイディアを作る作家と、キャラクターなどを作る作家、それをもとに実際の漫画に落とし込んでいく作家と、それぞれが得意なところを持ち寄って作業を分担することが可能になり、これまでのように一人の作家にすべてかかっていたリスクを減らせるとも考えたそうです。

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これまでにも、原作と作画を別の人が行なう漫画はたくさん生まれていますが、三田さんの分業制はそれを「外注」と位置づけることで、一人の漫画家から分散させていく方法と言えます。そして分散することでリスクを減らすことは、出版社にとっても良い方向だと言います。

既に『ドラゴン桜2』ではこの外注制を行なっており、作画の会社に印税の一部を渡しているそうです。

現状はまだ試行錯誤の途中で、作家、アシスタント、外注の作画会社、そして出版社のすべてにとってベストな方法にはなっていないそうですが、今は新しい形を産むための移行期ととらえているとか。

三田さんの目には、漫画界に限らず、日本人が抱く「長い時間、たくさん働くことが良いこと、下積みなどで苦労することが良いこと」という考え方を変えたいと言います。仕事の固定観念を壊すこと、それが目標なのです。

任せられるものは任せ、「楽をする」ことで新しい良い結果を産む。

週休3日、残業なしの環境を実現した先には、常識とされてきたことを壊し、より良い仕事の方法を作りたい、という気持ちが込められているのです。

『ドラゴン桜』が社会現象になったように、いつか三田さんの仕事観が社会現象になる日が来るかもしれません。

以上、三田紀房さんの紹介でした。ではでは~

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