8月20日、ロシアの野党勢力指導者
として、プーチン大統領を批判して
きたアレクセイ・ナワリヌイ氏が、
シベリアからモスクワへ向かう
飛行機の中で意識不明となり、緊急
着陸の後、病院に搬送されました。
朝、空港で飲んだ紅茶に毒物が
混入されていたのではないかと
されています。
現在、ナワリヌイ氏は集中治療室で
治療を受けていますが、重体だと
伝えられています。
ナワリヌイ氏、過去にも毒を盛られた?
ナワリヌイ氏は昨年の2019年、
デモを呼び掛けたとして逮捕され、
刑務所に収監されています。
その時にも、両まぶたがピンポン玉
のように腫れあがり、体中に膿瘍が
できる重度のアレルギー症状を
起こし、病院に入院しました。
ナワリヌイ氏にはアレルギーの
既往症はなく、これも毒を盛られた
症状であると主張、捜査を要請して
いました。
ソ連~ロシアの毒殺の歴史
ロシアでは、旧ソ連の秘密警察・
KGBの時代から毒による暗殺が
行われてきました。
プーチン大統領がKGBに在籍して
いたこともあり、現在もなお、
毒物を使用して政敵を排除する
ことが横行しているのではないか
と推察されます。
ノビチョク ソ連が開発した神経毒
「ノビチョク」とはロシア語で
「新参者」という意味を持ちます。
1970年代のソビエト連邦時代から、
ロシアに体制が変わっても毒物の
開発は行われ、ノビチョクは強力な
化学兵器として生産されました。
ノビチョクの存在が明らかに
なったのは、1992年。
2人の科学者、フェドロフと
ミルザヤノフが、化学兵器施設の
外で安全基準の80倍に及ぶ致死性
物質が検出されたことを恐れて
暴露したことによります。
ノビチョクは神経毒で、全身の
筋肉を収縮させることで、心臓と
横隔膜を停止させ、死亡させる
ものです。
開発中の科学者が誤ってノビチョクに
触れてしまった事故があったといい
ますが、その科学者は重度の身体
障害と意識障害を起こし、回復する
ことなく、5年後の1992年に亡く
なったことから、ノビチョクによる
被害が明らかになったそうです。
ノビチョクの使用例
2018年、イギリスのソールズ
ベリーで、ロシアの情報局幹部
だったスクリバリ氏とその娘を
暗殺するためにノビチョクが
使用されました。
攻撃された2人だけでなく、
救急隊員といあわせた一般人も
被害にあい、3人が入院するほどの
被害が出たほか、現場周辺の除染の
ために180人の軍隊が出動するなど
したそうです。
リシン 自然界の猛毒
リシンは自然界に存在する猛毒で、
トウゴマの種から抽出される
たんぱく質です。
1888年にエストニアの科学者が
種子からの分離に成功し、リシンと
名付けました。
↑トウゴマの種子
リシンは体内に入って10時間ほど
経過すると、タンパク質の合成を
停止させ、人体の新陳代謝を
不可能にして死亡させます。
致死量のデータはなく、また、
解毒剤もありません。
リシンの使用例
1978年、ロンドンでブルガリア人
亡命者の作家ゲオルギー・マルコフが
急死したのですが、このニュースを
知った同じ亡命者のウラジミール・
コストフは、2週間前に何者かに
傘の先端で体を突かれたことを
思い出し、緊急検査したところ、
リシンが入った約1ミリの弾丸が
見つかったそうです。
コストフは厚着をしていたため、
体内深くに弾丸が入らず、
命拾いしたのでした。
このことからマルコフの検視を
行なったところ、同じ弾丸が発見
され、傘に偽装した空気銃で暗殺
されたことが明らかになったのです。
反共産主義の亡命者を狙ったのは、
ソ連のKGBか、ブルガリアの秘密
警察であるSTBではないかと
言われていますが、真相は明らかに
なっていません。
このように、旧ソ連の時代から、
毒物による暗殺は繰り返され、
現代に至ってもなお、政敵を
倒すために非人道的な毒殺と
いう方法が生きているのは
恐ろしいことです。
プーチンが毒物を手放すことは
あるのか、ロシアの政治が毒殺を
辞める日がくるのか、それは分かり
ませんが、ロシアに限らず、
何千年もの昔から人類が手にして
きた毒という武器は、なくなら
ないのかもしれません。
以上、ナワリヌイ氏の事件と
ソ連~ロシアの毒物についてでした。
ではでは~