(出典 : http://te-co.jp)
今回は、3月26日オンエアの
『デザイン トークス+』に
出演した
金野千恵(こんの・ちえ)さんを
クローズアップしたいと思います。
プロフィールの他、
金野千恵さんが友人と
立ち上げた
建築会社teco(テコ)の手掛けた、
「共生」をテーマにした建築を
見てみました。
プロフィール
金野千恵さんは
1981年生まれ。
2005年に東京工業大学工学部
建築学科を卒業した後、
スイスの連邦工科大学に
奨学生として留学しました。
のち、東京工業大学に復学し、
2011年に工学博士号を取得。
11年以降は大学院の助手や
客員研究員、非常勤講師など、
学際的な活動を務めています。
2015年に、友人の
アリソン理恵さんとともに
一級建築士事務所 t e c oを
設立。
梃子(てこ)のように、
小さな力で大きなものを
動かすことをモットーに
ビジネスの世界に打って出て、
住宅や公共施設などの設計を
数多く受注しました。
t e c oは、一般の住宅
以外に、福祉や介護の場と
なる建物の設計に多く
かかわっているのが特徴です。
地域になじみ、利用者だけ
でなく、地域のいろいろな人が
気軽に集まれる半・公共の場と
しての空間をデザインすることを、
イタリアのロッジアという
半屋外の屋根のある空間や、
ネパールのパティという
軒先のスペース、さらに日本の
涼み廊下などに着想を得て、
設計しています。
街と共生し、世代が共生する作品
住宅「向陽ロッジアハウス」
金野千恵さん
が2011年に手掛けた新築住宅が、
東京の郊外にある戸建て住宅の
「向陽ロッジアハウス」です。
(出典 : http://te-co.jp)
庭と建物の間を、ロッジアと
呼ばれる屋根付きの半屋外
空間がつないでいますが、
このロッジア自体には特別な
機能はなく、ただなんとなく
いられるという、開放的な
場になっているのが特徴です。
(出典 : http://te-co.jp)
(出典 : http://te-co.jp)
ロッジアに家の人と地域の人が
集まり、食事をしたり遊んだり
できるようになっています。
訪問介護事業所「地域ケアよしかわ」
埼玉県吉川市にある
吉川団地の商店街の一角を、
訪問・介護事業所として
リニューアルしたもので、
2014年に完成した物件です。
(出典 : http://te-co.jp)
金野千恵さんにとって、
初めて福祉にかかわった仕事と
なりました。
テーマは、
「地域の人が集まれる空間」。
訪問介護のスタッフが待機する
事業所であると同時に、公園に
面した場所柄を生かし、高齢者・
一般の人の別なく、気軽に
集まれる場になることが
求められました。
(出典 : http://te-co.jp)
こちらも偶然ですが、イタリアの
ロッジアのように、屋根付きの
屋外空間があります。
(出典 : http://te-co.jp)
外に長い椅子を作り、それを
中まで続けて入りやすい効果を
出した設計になっています。
訪問介護のステーションと
いうことで、最初は高齢者の
利用を考えていたそうですが、
軒先に子どもたちが集まる
ようになり、高齢者と子ども
たちの交流が自然と生まれた
ことは、金野千恵さん自身に
とっても意外な「使われ方」
だったそうです。
しかも、子どもたちの中には
夜までここで過ごす子がいて、
親の帰りの遅い子が夕ご飯の
時間になっても一人でいる
ことに気づいたことから、
ボランティアや事業所の
職員が子ども食堂を立ち上げるに
至ったといいます。
まさに、地域の「場」として、
地域に存在する問題点にも
気づかせてくれる建物と
なったわけです。
「幼・老・食の堂」
訪問介護事業所
「地域ケアよしかわ」の経験を
生かしたのが、2017年に設計した
「幼・老・食の堂」です。
(出典 : http://te-co.jp)
こちらは、設計当初から高齢者と
子どもを対象とした福祉サービス
拠点として計画されました。
高齢者向けには、看護小規多機能
型居宅介護施設と呼ばれる、
在宅の高齢者の訪問・
デイサービスや宿泊を手掛ける
場として、また、子ども向けには
企業主導型保育所として、社員の
子どもを中心とした預かり
サービスを行う場として、
これらを収束して「食」を
提供する場所となりました。
道路に面した1階は、さまざまな
世代の人が集うように、地域に
開かれた食堂になっていて、
この「場」の在り方が、そのまま
街につながるように設計され
ました。
高齢者施設、子ども向け施設、
と縦割りにするのではなく、
いろんな人がいられる空間で
あってほしい、というのが
金野千恵さんの求める
在り方なのです。
(出典 : http://te-co.jp)
(出典 : http://te-co.jp)
金野千恵さんは、建築家と
して、住宅の専門家、施設の
専門家といった、何かの専門家に
なりたいとは思っていないと
いいます。
逆に、特定の分野から飛び出して、
新しいことに挑戦し、さまざまな
ことを包括的に手掛ける
ジェネラリストとしての建築家で
ありたいそうです。
建物の使われ方は、一つだけ
ではありません。高齢者施設が
子ども食堂にもなったように、
建築家でさえ思いつかなかった、
新しい使われ方がある、
ということが、建築に新しい
世界を広げてくれると
金野千恵さんは思っている
そうです。
以上、一級建築士の
金野千恵さんと、
その作品についてでした。
ではでは~