(出典 : https://www.asahi.com)
今回は、1月20日オンエアの
『事件の涙』より、
2000(平成12)年12月30日夜に、
東京都世田谷区の一家が殺害された
事件をクローズアップしたいと思います。
事件は20年たった現在も未解決の
ままです。
その20年を区切りとするかのように、
2019年の12月26日に警視庁から
遺族に対し、家の証拠保全が終了した
として、家の取り壊しが打診されました。
しかし、遺族は事件の風化を防ぐ
ためにも、家の保存を訴えています。
現在の家の状況は築30年。しかし人の
住まなくなった家は急速に老朽化が進み、
雨漏りや外壁の剥がれなどが進んでいる
と言います。
人が住まなくなった家はなぜ急速に
老朽化してしまうのでしょうか。
家の取り壊しを警視庁が打診
当たり前の話ですが、事件のあった
家は警察が証拠として保全します。
ところが、世田谷一家の家はもともと
区画整理が計画されていた土地で、
事件後に取り壊しの打診があった
そうです。
それを警察が家屋取り壊し延長を
要請してストップをかけていました。
しかし、事件直後、一家の変わり果てた
姿を最初に発見した、妻・泰子さんの
母親(故人)は、特にショックが強く、
家を見たくない、早く壊してほしい、と
取り壊しを希望していたといいます。
それが20年を経た2019年12月、
一家の命日が近づいた26日に、
警察が遺族に対し、「取り壊し
延長の要請」を「解除」する
通知を送ったのです。
理由の一つは、家の証拠はすべて収集し、
家自体の状況も3Dデータとして保存
できたこと。
もう一つは、家の老朽化がひどいので、
取り壊してはどうか、ということでした。
(出典 : https://www3.nhk.or.jp)
特に家の外壁が剥がれ落ちているため、
現在は警察がネットを張るなど家全体を
保護している状態であることや、家の前に
24時間欠かさず警官を配置していること
など、警察側にも負担がかかっているのは
事実なのです。
そこで20年を節目に取り壊しを打診し、
返答に関わらず防護ネットや警備を
やめると通知したのです。
遺族は保存を希望
警察から「取り壊し延長要請を
解除するので、家を取り壊しては
どうか」と打診された遺族は、
年明けた2020年の1月18日に、
この家をメディアに公開しました。
妻・泰子さんの姉にあたる入江杏さんは、
「4人が生きていたことを知ってほしい、
この場の空気を残してほしい」と公開を
決意したそうです。
(出典 : https://www3.nhk.or.jp)
家の中は、事件のあった当時のまま、
一家の生活をしのばせるものが
残っていました。
家が取り壊されたら、これらの
「生活の証し」も消えてしまう。
何より未解決の事件の現場がなくなる
ことで、遺族は事件が風化してしまう
ことを危惧しているのです。
入江杏さんは、警察に要請書を
提出し、取り壊しの延長を要請
しました。
それまで延長を要請していた警察に
対し、今度は遺族の側が延長を
要請する形になったのです。
人が住まない空き家の老朽化が早いのはなぜか?
一家の住居は事件当時で築10年、
現在は築30年になります。
30年と聞くと、老朽化はまだ先の
ことのように感じますが、人が
住まなくなって20年たった家は、
急速に老朽化しています。
外壁は防護ネットが必要なほどに
剥がれ落ち、屋内も雨漏りがところ
どころでひどくなっているといいます。
(出典 : https://www3.nhk.or.jp)
天井は雨漏りをビニールで受けて
ホースで浴室に流している状態です。
ロフトに上がるための収納式のはしごも
壊れていて、今は使用できません。
家のドアも錆びています。
人が住まなくなった家は傷みが早いと
いいますが、なぜここまで傷んで
しまうのでしょうか。
換気ができない
人が住んでいる家では、人が歩くなど
移動したり、窓を開けたり、空調を
つけたりすることで空気が動きます。
しかし、人の出入りがなくなると、
家の中の空気が動かなくなります。
動かない空気はよどみ、湿気や
冷気をためこんでしまいます。
そのためカビなどが発生し、特に
木造住宅では木材が傷みます。
また、さまざまな虫がわき、
シロアリなどの被害につながります。
水道が使われない
水道が使われないと、水道管の
中の水がよどみます。また、
管内のトラップの水が蒸発する
ため、下水道の臭気や虫が
侵入します。
排水管自体も劣化が早くなり、
ゴム栓が割れたり、配水管そのものが
壊れてしまうことにつながります。
ホコリやサビ・カビがたまり、虫の死骸が散乱する
家を掃除する人がいないので、
ホコリがたまり、そこから
サビなどの劣化が進みます。
また、水道管などから虫が侵入
することで、その死骸が床に
散らばるようになります。
湿気がたまることでできるカビは
壁などの奥深くに染みこむため、
傷みのスピードを速めます。
メンテナンスされない
人が住んでいれば、雨漏りなどにも
すぐ気が付くことができ、修理も
行われます。
しかし、人がいないとそうした
修理の手が入らず、こわれるがままに
なってしまいます。
そのため、家の劣化が急速に進んで
しまうのです。
「家は人がいないと傷む」というのは、
よく言われることですが、こうした
多くの理由が積み重なって起こる
現象なのです。
事件を風化させない
空き家となり、急速に老朽化して
いる現場ですが、事件が未解決である
ことを考えると、取り壊すことを
ためらう遺族の方の気持ちは頷けます。
今回、現場がメディアに公開された
ことで、私たちはこの家に生活して
いた家族の息遣いを見ることが
できました。
しかし、取り壊してしまったら、
一家の生活の証しは永久になくなって
しまいます。
費用や責任のありかなど、問題は
山積するかもしれませんが、こうした
問題にこそ、税金が補助を出して維持・
保全していくことが必要ではない
でしょうか。
家の朽ちるに任せて、事件そのものまで
が消えてしまうことにならないよう、
手が差し伸べられてほしいと思います。
そうして事件の解決がみられたときに
はじめて、この家の使命も終わるのでは
ないでしょうか。
以上、世田谷一家殺人事件の現場と
なった家の老朽化問題についてでした。
『事件の涙』で採り上げられた
他の事件についてはこちらをどうぞ。