今から10年前に書かれた
小説『首都感染』が、
新型コロナウイルス
covid-19に襲われる現在を
予言したと話題になっています。
本書の内容と、作者の高嶋哲夫氏に
ついて、アマゾンレビューの書評
なども見てみました。
『首都感染』の内容
二〇××年、中国でサッカー・
ワールドカップが開催された。
しかし、スタジアムから遠く
離れた雲南省で致死率六〇%の
強毒性インフルエンザが出現!
中国当局の封じ込めも破綻し、
恐怖のウイルスがついに日本へ
と向かった。検疫が破られ
都内にも患者が発生。
生き残りを賭け、空前絶後の
“東京封鎖”作戦が始まった。
(アマゾンより)
主人公は、「WHOのメディカル
オフィサーを辞めてスイスから
日本に帰国。友人の父親が経営
する黒木総合病院に勤める
内科医」の瀬戸崎優司・35歳。
医師としての仕事に限界を感じ
つつ、アルコールに逃げがちな、
少しやさぐれた感じの人物です。
しかし、父親は現職の内閣総理
大臣であり、この物語では
政治的な圧力として父親の
存在が主人公にのしかかってきます。
『首都感染』は10年前にコロナを予言していた?
『首都感染』では、登場する
病原菌はインフルエンザと
されていますが、中国の奥地で
最初に発生するという設定は、
新型コロナウイルスと合致します。
中国政府の封じ込め失敗や、
検疫をすり抜けて日本国内で
患者が発生するところも、まるで
現在の状況をなぞったかのように
展開していきます。
コロナより恐ろしいのは、
その新型インフルエンザの
致死率がなんと60%ということ。
ワールドカップが終了し、
サポーターたちが世界に散って
いくことで、ウイルスも拡散
されてしまいます。
ついに東京でも感染が確認され、
日に日に患者数が増えていく中、
総理大臣と厚労省は東京封鎖
という、前代未聞の作戦の実行を
決断します。
果たして封鎖は成功するのか?
――というパニック小説・
シミュレーション小説です。
現実はこの小説を上回り、
東京だけでなく、地方都市でも
患者が確認され、もはや「封鎖」
どころではないのですが、
それでも人口の集中する東京で、
さらなる爆発的感染が広がったら、
この小説のように首都東京の
封鎖が必要になるかもしれない、
そう思わせる内容です。
『首都感染』の著者・高嶋哲夫
(出典 : http://webun.jp)
著者の高嶋哲夫(たかしま・
てつお)氏は1949年生まれ。
慶應義塾大学工学部卒業、
慶應義塾大学大学院で核融合の
研究を行い、修士修了後は
日本原子力研究所(現・日本
原子力研究開発機構)の研究員に
なり、さらにカリフォルニア
大学に留学しているエリートです。
しかし、1981年に帰国後は、
一転して学習塾を経営。
ここから小説を書き始めた
ようで、1990年には『帰国』で
北日本文学賞を受賞。
1994年『メルトダウン』で
第1回小説現代推理新人賞を受賞。
さらに、1999年
『イントゥルーダー』で
第16回サントリーミステリー大賞・
読者賞をダブル受賞を果たしました。
専門知識に基づく緻密な描写で、
シミュレーション小説や、
パニック小説を得意とする作家です。
そして、その作品のいくつかは、
後の時代の災害を予言したかの
ような内容で知られています。
2005年発表の『TSUNAMI
津波』は、東海・東南海・
南海地震が連発した日本を
未曽有の津波が襲い、都市や
港湾、そして原子力発電所を
破壊するという、2011年の
東日本大震災の津波を予見
したようなストーリーです。
2010年の『東京大洪水』では、
超大型台風の襲来で、東京の
3分の1が水没するという内容
ですが、これは2019年の
台風19号の被害をほうふつと
させます。
そして、2010年発表の
『首都感染』が、今回の
新型コロナウイルスの災禍を
予言したとして、高嶋哲夫氏の
シミュレーション小説が3度の
予言を果たしたといわれて
いるのです。
アマゾンで爆売れ レビューも驚愕
新型コロナウイルスの脅威が
迫る今日から見ると、まるで
予言書のようにもみえる
『首都感染』は、発表から
10年、文庫化から7年を
経た今、あらためて注目が
集まり、アマゾンでは単行本も
文庫本もプレミア価格がつき、
それでもなお売り上げを大きく
伸ばしています。
レビュー欄にも、新型コロナ
ウイルス禍を受けてこの本を
読んだという書き込みが散見
され、注目の高さを感じさせます。
「コロナウイルスを予見?
コロナウイルスが蔓延した
2020年2月に読んだ本。
都市封じ込め政策は、
効果があるのかも……と
思えた一冊。
コロナ対策時より、遥かに
日本政府が思いきった決断を
しているので、なかなか
面白かった。」
「はるかに立派な総理と厚生大臣
なんと、新型コロナウイルスの
流行る今と状況が似ているのかに
驚きながら読みました。
医療のプロというのは大変なんだな、
と感じました。
この本の中では立派な総理と
知見のある厚生労働大臣が、
いろいろ対策を発表します、
現実はそれとかけはなれていて、
ザンネンなことしきり。
医療従事者にも家庭がある、
人生がある。頭が下がりますね。」
「ウイルス対策
今回のコロナ騒ぎにこんなにも
酷似しているとは正直驚きを
感じます。作者は10年も前に
警鐘を鳴らしていた。
中国は隠す。封じ込めに出遅れて
感染拡大する。そして日本や
世界へ拡がって行く。
今現在の日本や世界の対応を
視ると、この小説がシミュレー
ションの域を越えていることに
驚愕する。違いはウイルスが
強毒性なのと、登場人物たちの
リーダーシップぐらいか。
今を備える意味でも将来の
心構えの意味でも一読を
推奨いたします。」
10年前に書かれた本が現在を
予言していたことは、つまり
こうした危機がいつ起きても
不思議ではなかったことを
示しており、ならば少しなり
とも備えることはできなかった
のかと思わずにいられません。
『首都感染』がどのような
結末を迎えるのかは、ネタバレに
なりますので、ここでは書き
ませんが、結末までそっくり
実現してしまうのか、おおいに
気になるところです。
とりあえず、『首都感染』の
瀬戸崎総理のような、強い
リーダー像は安倍総理には
期待できなさそうな点が
いちばんの気がかりです。
現実も『首都感染』のようになるのか?
中国・武漢の封鎖からようやく
1か月が過ぎようとしている
現在ですが、この1か月の間に
日本の状況は大きく変容しました。
検疫をすり抜けて各地で
発生する感染。
マスクや消毒薬の品切れの
パニック。
大規模イベントの縮小や中止。
そして3月に入り急きょ
実施された学校閉鎖。
たった1か月で、それ以前には
考えもつかなかった事態が押し
寄せました。
これまでの1か月を振り返ると、
これからの1か月はどうなって
しまうのか、想像もできない
状態です。
中国・武漢は『首都感染』の
物語さながらに、一つの都市圏を
まるごと封鎖しましたが、
失敗に終わり、感染は世界に
広まりました。
日本もリスクの高い国として
世界から注目されてます。
しかし、小説と違い現実には、
思い切った政策を果敢に実行する、
強いリーダーたる総理大臣は
期待できそうにありません。
国民も政府ばかりを頼っては
いられないと思います。
だからこそ、ウイルスを
「正しく怖がる」ことが必要
なのではないでしょうか。
以上、高嶋哲夫氏の3度目の
予言の書?『首都感染』に
ついてでした。
ではでは~